繊維特性に起因する苦情から-24

有限責任中間法人 日本繊維技術士センターの
顧問 松尾 繁 氏が執筆されました。
【繊維特性に起因する苦情から】
の内容を松尾繁氏のご了解を得まして記載させいいただきます。
内容は生地の種類別に記載されていまして、『綿』、『麻・毛・絹』
、『再生繊維・アセテート・ポリエステル』、『ナイロン・アクリル』
と四つに分かれています。
きっと皆さんにとって参考になることと確信しまして松尾氏にご無理を
お願いしまして記載させていただくことになりました。
このブログにて改めて感謝の意を表します。
        【 麻 ・ 毛 ・ 絹  】
5    絹の特性に係わる品質苦情

5-4  金箔糸使用の帯に関する苦情
 金箔糸使用の高級帯を防虫剤の樟脳を入れて箪笥で保管していたところ、
折りたたまれていた部分が粘着するようになったという苦情。
  金箔糸は本来和紙に漆を塗って金箔を貼り、これをスリットした扁平糸である。
近年、手間ひまかかる漆に替えてニトロセルロースが使用されるようになった。
防虫剤として使用される樟脳はニトロセルローに対して一種の可逆剤となるもので
柔軟性を調整する働きがある。
帯を保管している間に防虫剤として使用している樟脳が昇華して金箔糸に付着し、
ニトロセルロースが軟化し、金箔糸の部分がべとべととするようになつたものである。
 漆の代わりに吐露セルロースが用いられるようになったことは呉服問屋でも知らず、
金箔糸の工房を訪ねてはじめて接着剤の漆がニトロセルロースに替わったことがわかったものである。
この事例は伝統工芸が次第に変化していることによって生じた苦情である。
樟脳は和服に適した防虫剤として永年使用されてきたが、これを機会に薬品メーカも「樟脳は和服に適した防虫剤」というこれまでの広告の表現を取り消した。

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